中国では新型コロナウイルスを徹底的に抑え込む「ゼロコロナ」政策の先行きを巡ってさまざまな観測が広がり、株高に弾みがつくなど異様な盛り上がりを見せている。
習近平総書記(国家主席)は先月開催された共産党大会の開幕日に行った活動報告で、ゼロコロナ政策を擁護。同政策の中心を成すロックダウン(都市封鎖)や大規模検査が続く中で、投資家は今後の展開を探っている。
ゼロコロナの撤廃時期を巡る明確な見通しがない中で、先週は中国当局が経済活動再開や水際対策の緩和に向けた具体的な計画を策定していると主張する未確認のスクリーンショットに投資家が飛びつき、株高に火が付いた。
香港上場の中国本土株が急騰-ゼロコロナ出口巡る未確認の投稿で
コロナ感染拡大でロックダウンが講じられた住宅区を囲むフェンス(11月7日、上海市で)
Photographer: Qilai Shen/Bloomberg
だが、国家衛生健康委員会の当局者がゼロコロナ政策を堅持する方針を先週末に改めて表明したことで、こうしたうわさも後退を余儀なくされた。
金融市場の変動は激しい状況が続いている。大きく売り込まれた本土株の動向から、世界経済の見通しに至るまで中国当局の意図を解読することが極めて重要だ。そこでゼロコロナ政策の今後を探るに当たって、これまでに分かっていることをQ&A形式でまとめた。
ゼロコロナ政策の調整を示唆する変化は最近あったのか
習総書記の活動報告以降、ゼロコロナ政策で国際的な孤立を招いていた側面を改善する方法を巡り、当局が少なくとも協議を始めたことを示す確かな兆候は出ている。
ブルームバーグ・ニュースは先月、中国当局が入国者に対するホテル強制隔離期間を短縮するかどうか議論していると報道。航空監督当局も増便を国有の航空各社に促したほか、中国にコロナ陽性者を一定数乗せていた航空会社に罰則を科す制度の撤廃も検討されている。こうした動きは協議あるいは計画段階が中心だが、水際対策の緩和を目指す姿勢を示唆している。
中国当局、入国者のコロナ隔離期間短縮を議論-関係者
中国はゼロコロナ終了を準備しているのか、あるいは微調整にとどまるのか
それは分からない。水際対策を緩和すれば中国の国際的孤立を和らげることはできるが、ロックダウンなど経済的にマイナスとなるゼロコロナの別の側面に対処することにはならない。往来の制限を微調整すればゼロコロナ政策の持続性は高められ、大規模な監視システムを下支えするとともに、抑制されたレベルでの世界との交流も促すことができ、習氏にとっても有益だ。
だが、中国がロックダウンや国内の移動制限、頻繁な大規模検査などの戦略を和らげる具体的な兆しを見つけることは難しい。
中央政府は過剰なゼロコロナ政策の執行を控えるよう地方当局者に指示したが、逆に目立たない形で制限が続く事態につながっているようだ。ロックダウンや学校閉鎖など他の制限措置はより見えにくい形で進んでいる。大々的な発表を避けるために、都市のロックダウンは住宅区ごとに行われる可能性があり、帰宅して初めてロックダウンされていたことが分かったと報告する住民もいる。
野村ホールディングスがまとめた指数によると、先週はロックダウンが拡大。中国の国内総生産(GDP)全体の10%強が3日時点で何らかの封鎖下にあると野村のアナリストらは分析した。
中国、iPhone生産拠点周辺地域をロックダウン-アップルに打撃も
河南省鄭州市で生活必需品などを受け取るフォックスコン従業員(11月3日)
Photographer: VCG/Getty Images
真偽不明のスクリーンショットに関して何か分かっているのか
マーケットの評論家やトレーダーがソーシャルメディアを通じて広めたスクリーンショットは、共産党最高指導部の1人が専門家らと会合を開き、来年3月までに経済活動を再開する具体的な計画を議論したと主張。これを誰が書いたのか分からず、出所も不明だったが、これをきっかけに中国株高に弾みがついた。
それから1週間、国内外を問わずこのスクリーンショットを確かめることができた報道機関はない。中国外務省の趙立堅報道官は北京で今月1日に開いた定例記者会見で、政府がゼロコロナの出口に向けた方法を評価する委員会を設置したのかとの問いに対し、承知していないと答えた。
当局者や国営メディアはゼロコロナに関して何を言っているのか
中国の当局者はゼロコロナが中国にとって正しい対策であり、政府はこれを「揺るぎなく」実行するとの公式見解を繰り返すという点で足並みがそろっている。
投資家は国営メディアがコロナに関してどう報じているのか、当局者が何を言っているのか行間を読もうと必死で、宣伝活動の変化を示す材料としてコロナに関する表現が穏やかだと見受けられるものには飛びつく状況にある。レトリック上の変更は確かに注目すべき材料だが、市場が最近飛びついた例は根拠が薄弱だ。
河南省鄭州市で戸別のコロナ検査を実施する担当者(11月1日)
Photographer: Feature China/Future Publishing/Getty Images
ワクチンや治療薬があるのに中国が方向転換に消極的なのはなぜか
中国の国産ワクチンが欧米のメッセンジャーRNA(mRNA)ほどの有効性を持たないという事実についてはいろいろ語られ、当局がゼロコロナ政策からの脱却に消極的なのもこれで説明がつくかもしれない。だが、国産ワクチンでも死亡を防ぐ効果は高い。
中国国内でも生産されているファイザーの治療薬「パクスロビド」やワクチン接種があるとはいえ、コロナで死亡する可能性は残る。中国の人口を考えると、何百万人もの死者を出す恐れもあり、習氏とっても問題だ。ゼロコロナ政策の正しさを示す最大の証拠として、主に米国と比較して死者を低水準に抑え込んできた経緯もある。
習指導部は、オミクロンよりもさらに重症度の低い新たな変異株の出現、またはより有効なワクチンや治療薬の開発を通じて、死亡リスクが一段と低下するまでコロナ感染拡大を許すことに消極的なだけなのかもしれない。
ゼロコロナ脱却の条件とは何か
ブルームバーグが取材した専門家は多くの動向を注視しており、それには中国の当局者が挙げたものも含まれている。
- 高齢者を中心とした本格的なワクチン接種の取り組み、接種義務付けの可能性も
- mRNAワクチンの一斉導入
- 病院の収容能力向上、コロナ感染症を必ずしも入院を必要としない疾病とすることも含む
- 水際対策の緩和
- ロックダウンや他の対策の撤廃
そして政治的なレトリックも明確に変わる必要があるだろう。